イノセンス

押井守の労作「イノセンス」について少し書こうと思う。この映画の欠点は三つ。「CG」「体言止め」「武藤寿美」。後ろのふたつはさておき、声を大にして言いたいことは、日本において制作されるCGは未だ、表現のための道具として有効に働くだけのレベルに達していないということだ。技術とセンスの両面において、明らかな未熟さがあり、通常のアニメーション技法を基本にして作られた画面に遠く及ばない。しかし、それらの欠点を差し引いてなお、この作品がクリエイターの創作物として傑出していることに変わりは無く、特にレイアウトの見事さ、カッティングの呼吸の的確さは、洗練の域に達しており、押井守の持つ、研ぎ澄まされた演出感覚には、素直に脱帽する。巷に内容を云々言う声があるが、この映画は難解なのではなく韜晦なのであり、理解出来ようが出来まいが、スタイリッシュな演出を志す押井守の作劇法として、楽しめば良いのである。無論、本来は娯楽を旨とする映画というメディアの、それも「攻殻機動隊」という、稀に世界から注目されたジャパニメーション作品の続編が、分かりやすさを放棄した処から始まるのは、日本のアニメーション業界にとって大きな損失だろうけれども、そういった柵に引っ張られて、大衆の期待の奴隷となることを善しとしない姿勢が、押井守本来の持ち味を支えているのかも知れない。ともかく、ハンス・ベルメールやデビッド・カニンガムの影響を昇華し、人形という魂無き存在の手触りを、ここまで具体的に描いた作品は他に無く、現実と虚構の狭間を行き来する戦闘や、ロボットを使ったアクションの斬新さは、さすがと思わせるものがある。賞賛されてしかるべきだろう。
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